講演会詳細


群馬大学アナログ集積回路研究会


題目: 「MOSトランジスタとIC 〜差動対+カレントミラー≒IC〜
           〜真空管時代は50年、ではCMOS時代は〜」
講師: 源代裕治先生(ザインエレクトロニクス)
日時: 2019年11月26日(火)16:00-17:30
場所: 群馬大学理工学部(桐生キャンパス)3号館509号室(E大教室)
概要: 源代担当分最終回では、IC時代になって何が変わったかを見て行きます。

初期のICはバイポーラで作られました。カレントミラーは、この時に
登場します。個別素子の時代に苦労したバイアス回路方式ですが、
カレントミラーが決定版となり、他の方法を駆逐することになります。

一方の差動対ですが、これは真空管時代の発明です。しかしIC時代になるまで
広く用いられることはありませんでした。高価な真空管を2倍使うからです。
IC化によるパラダイムシフトです。

トランジスタの登場と期を同じくして登場したコンピュータが、元々高価で
ICが幾ら微細化しても、コストが下がった分以上に需要が増えるという
市場になりました。

MOSトランジスタは真空管以来のgm素子です。その実用化は、ICの登場と
時期が重なります。回路から見るとこの素子は、gmが小さいやらノイズが
大きいやらで、バイポーラから移行する意義が見い出せられないのですが、
ディジタル回路と同じプロセスで作るというメリットが、何より大きい
モチベーションになってCMOS化が進みました。

CMOSに適した回路形式が工夫されてくると、微細化のメリットが享受できて
バイポーラではとても及ばない性能も実現されるようになっています。

微細化には膨大な投資が必要ですが、これを正当化してきたのがIC初期の
1965年に提唱されたMooreの法則です。1990年頃にはもう限界かも、と
言われていましたが、それから30年間ずっと限界説が唱えられています。
いつかはCMOS時代の終わりが来るにしろ、エンジニアは、その状況変化に
適応して行くだけのことでしょう。


11/5の講義で説明したレポート課題は、資料
回路の回り道2019_講義資料2_回路とデバイス.pptx
の最終ページにあります。12/15までに提出ください。

源代先生からのメッセージ: 技術は変化する。電気のように長い歴史がある分野でも、ずっと変化し続けてきた。現在の技術も完成したものではない。
将来のことは分らないが、過去の技術を振り返って現在の視点から眺めてみると、未来を照らす知恵ともなろう。
以て、偉大な先人たちの苦闘を偲び、困難な問題に立ち向かう勇気となさん。
私の担当分5回分の講義では、このような趣旨で、回路の歴史を現在に繋がる視点から散策しようと思う。
良く知っていると思っていることも違う方向から眺めると、きっと楽しい発見がある(といいな)。
各回の大まかなテーマを記す。回路を鑑賞するのに必要な回路理論は、授業ではめったに学ばないので、
その素養をざっくりと養ってから、概ね時代順に、能動素子に応じて工夫された回路を味わって行こうと思う。
回路方程式は殆ど使わない。式を使って分かることも重要だが、式がない方が良く分かることも多いのである。
その代わりにシミュレーションなど当時は使えなかったツールも、使えるものは躊躇なく使う。