講演会詳細


群馬大学アナログ集積回路研究会


題目: 「回路の理論 〜Kirchhoffの法則はOhmの法則の一般化ではない〜
       〜 電圧が高い方に流れる電流が見えますか〜」
講師: 源代裕治先生(ザインエレクトロニクス)
日時: 2019年11月5日(火)16:00-17:30
場所: 群馬大学理工学部(桐生キャンパス)3号館509号室(E大教室)
概要: 私の講義の第2回では、回路理論を再構築します。これは元々は
回路を鑑賞するのに有用な形に回路論を書き換える必要から始めたこと
でしたが次第に変貌して、かなり独自な体系になりました。出発点となる
のは第一回で名前を紹介したKirchhoffの二つの法則です。当時の認識は
現在とは大分異なっていたと思われますが、回路シミュレータの進化に伴い
Kirchhoffの法則が回路論の基本原理であることが明確になって来ました。
続いて素子の属性が、そのIV特性で規定されることを見ます。
Ohmの法則は回路的視点からは、法則ではなく抵抗の定義に過ぎません。

抵抗と独立電源(電圧源と電流源)からなる合成回路のIV特性が直線になる
ことから直ちに、x切片y切片としてThevenin等価回路、Norton等価回路が
導かれます。そこからもう一歩踏み出すだけで、縦に繋がる抵抗が並列に
見えてきたり、電源に向かって流れる電流が見えて来るようになります。
そうなれば、回路を鑑賞する準備の完了です。

源代先生からのメッセージ: 技術は変化する。電気のように長い歴史がある分野でも、ずっと変化し続けてきた。現在の技術も完成したものではない。
将来のことは分らないが、過去の技術を振り返って現在の視点から眺めてみると、未来を照らす知恵ともなろう。
以て、偉大な先人たちの苦闘を偲び、困難な問題に立ち向かう勇気となさん。
私の担当分5回分の講義では、このような趣旨で、回路の歴史を現在に繋がる視点から散策しようと思う。
良く知っていると思っていることも違う方向から眺めると、きっと楽しい発見がある(といいな)。
各回の大まかなテーマを記す。回路を鑑賞するのに必要な回路理論は、授業ではめったに学ばないので、
その素養をざっくりと養ってから、概ね時代順に、能動素子に応じて工夫された回路を味わって行こうと思う。
回路方程式は殆ど使わない。式を使って分かることも重要だが、式がない方が良く分かることも多いのである。
その代わりにシミュレーションなど当時は使えなかったツールも、使えるものは躊躇なく使う。