群馬大学アナログ集積回路研究会」が正式発足
2003年10月10日(金)に設立総会が開催される

最先端のデジタル技術を支える「高速、高機能アナログ技術」に関して、大学が主導し、企業等の研究者、技術者らとの交流を目的とした「群馬大学アナログ集積回路研究会」(会長 本間重雄工学部長)が10月10日(金)に正式発足し、その設立総会が桐生市民文化会館で行われた。
大学・高専等の研究教育機関、関連企業、公設研究機関、行政、NPO、報道関係者等の150名程度の参加者を得た。参加者は北関東地区だけではなく、東京、神奈川さらには滋賀、北九州からと全国から集まった。
デジタル化が進む電子機器においては、システムの目や耳の役割を果たし「デジタルを生かすための」高速、高機能アナログ技術の重要性はますます高まっており、差別化技術として各企業が研究開発にしのぎを削っており、世界中でアナログ技術の重要性とアナログ技術者の不足が叫ばれている。
群馬県には,ルネサステクノロジ(日立製作所と三菱電機の半導体部門の分社化・合併)と三洋電機の2大半導体メーカーのアナログ集積回路の研究開発拠点があり,また日本ビクター,サンデン、アドバンテスト等,アナログ集積回路を中核部品とするシステム開発を行っているメーカーも多い。
群馬県立産業技術センター(旧 群馬県工業試験場)においてもアナログ技術関連のサービスを(群馬大との共同研究を含め)地元企業に対して行ってきている。
一方群馬大学は,三洋電機との連携大学院、ベンチャービジネスラボでの同社との共同研究による製品化の実績,ルネサステクノロジとの連携大学院(平成16年度の開設予定),地域コンソーシアム活動を通じたアナログ集積回路に関する研究活動を行ってきている。
さらに群馬大学の電気電子工学科の教官が中心となり,今回の「アナログ集積回路研究会」設立の母体となる有志による研究会「アナログ集積回路研究会」を平成13年に立ち上げ研究教育活動を行ってきてる。これら実績と地域性を生かした本研究会は、内外の一流の講師を招いての講演会、産官学での共同研究の推進、世界に通用する人材育成を目標としており、この分野での日本初の大学発の産官学連携の研究会である。
発足式では本間重雄会長の主催者挨拶の後に2つの基調講演が行われた。1つ目は堀田正生氏(ルネサステクノロジ アナログ技術統括部長、群馬大学客員教授)により、「今、重要性を増すアナログ技術 - 群馬アナログ立国をめざして -」と題した講演である。
堀田氏は同社の経営陣の一角であり同時にアナログ関係で世界に知られた研究者である。
世界の半導体産業・技術の動向をサーベイし、その中でのアナログ技術の位置づけと重要性を説かれ、この分野での産官学連携の重要性を強調された。
さらに群馬県の地域性を生かし、群馬からアナログ技術で世界に発信できることを目指す「群馬アナログ立国構想」を提唱された。
2つ目の講演は名野隆夫氏(三洋電機セミコンダクターカンパニー部長、群馬大学客員教授)により「三洋電機におけるアナログ技術への取り組みと産学連携」と題した講演が行われた。
三洋電機がアナログ技術を重要視していることを紹介され、その後自らの群馬大学との産学連携の成功事例の紹介を行なわれた。
その中で「産学連携とは企業が大学から技術をもらうことではなく、何かを教えてもらうことでもない。
大学を活用して企業自身がレベルアップを図り、また大学も企業を活用してレベルアップを図りその結果自らの成果を自らの手で出すことが重要である」と強調され多くの人の共感を得ていた。
群馬県も群馬県内のアナログ関連技術・産業を支援し「5大星雲クラスター事業の一つとしてアナログを取り上げ「群馬県アナログ関連企業連絡協議会」を発足させている。
また、群馬県の支援により日立製作所アナログ技術者のOBが中心となりアナログ技術の教育・伝承、コンサルテングを目標としたNPO (アナログ技術ネットワーク) が設立された。
本研究会は今後これらの組織と連携していく。
さらに本研究会では大手電機メーカーOBの方々とこの分野での群馬大学発ベンチャー起業を模索している。
群馬大学はアナログ集積回路の研究教育で一つの特徴を出し、大学として競争力を出していくべきと考え、本研究会ではアナログ集積回路分野で世界トップレベルの研究開発拠点になることを目指し、来年度のCOE(Center of Excellence) 応募に向けて鋭意準備を進めている。
「アナログ技術」は単に回路技術だけではなく、デバイス、デジタル、ソフトウェア、システム、さらに信号処理、計測、制御技術等広範囲の技術分野が関係していることを強調しておきたい。
また、この分野で世界に通用する人材育成に注力していく。
地域貢献に関しては、進歩が急速なエレクトロニクス分野では世界と競争できる研究・教育を行うことが地域産業への最大の貢献と考えている。
現在研究会の活動として、ソニー、アナログデバイセズ社等からの講師を招いた講演会を企画し、またこれらの講演会と客員教授の堀田先生、名野先生のアナログ関係の講義案内等を電子メールで配信している。
学内教職員、学生だけでなく近隣企業からも多くの参加者を得ている。
研究会のホームページ(http://www.el.gunma-u.ac.jp/analog/)へのアクセスも多く、全国の大学の関連研究者、企業の技術者間にも知られてきている。本研究会活動には大手電機メーカーOBの方々のご支援・アドバイスもいただいている。
大学の研究レベルを向上させ、また世界に通用する人材を育成することが、現在の日本の閉塞感をうち破るための最短の近道・最大の貢献であり、日本の再生のためには高い教育レベルが日本の発展の原動力であるという原点に戻るべきと考える。
我々は本研究会での活動を通じてエレクトロニクス分野でこれらを実践していきたい。
本研究会の発起人、協賛、後援機関は次の産官学の機関であることを付記する。
群馬大学、 北関東産官学研究会、群馬大学工業会、群馬大学科学技術振興会、前橋工科大学、足利工業大学、 群馬工業高等専門学校、ルネサステクノロジ、 三洋電機、 アドバンテスト、日本ビクター、 サンデン、 太陽誘電、 沖電気、日本シイエムケイ、 アナログ技術ネットワーク、半導体理工学研究センター、電子情報技術産業協会、群馬県、 桐生市、 群馬産業技術センター、前橋市、 高崎市、 伊勢崎市、 太田市、 足利市。
(電気電子工学科 教授 小林春夫)