群馬大学地域共同研究センターニュースに掲載

 
 

米国西海岸の大学のエレクトロニクス研究室をモデル
群馬大学工学部とハイテク企業との連携を推進




電気電子工学科 小林春夫
 

筆者は米国カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院に2年間留学し、その後日本企業から米国シリコンバレー地区のベンチャー企業に出向し一技術者として1年間働いた経験がある。
そこではエレクトロニクス、コンピュータ・サイエンス分野を中心に大学と産業界が技術的および人的に密接に交流し、大学は実学を指向しながら高い研究レベルを誇っている。
筆者はこのような米国西海岸の大学をモデルにし研究室を運営している。
研究室のテーマは時代の要請が強い「トランジスタ・レベルからシステム・レベルまでの集積回路設計技術」「アナログ・デジタル混載システムLSI」であり、下記のようにいくつかのエレクトロニクス・メーカー、計測器メーカーと共同研究を行いながら研究のレベルの向上を図っている。
また企業の方が頻繁に研究室に出入りしていただくことにより、学生諸君にもよい刺激となっている。

(1)三洋電機(株) 共同研究「ミックスドシグナルCMOS回路の研究」1997年から現在まで当研究室では三洋電機(株)セミコンダクタカンパニー(群馬県邑楽郡大泉町)とLSI・半導体分野において精力的に共同研究・技術交流を進めてきている。
AD変換器、電源回路、高耐圧デバイス、トランジスタ・モデリング、LSI CAD 等の分野において他研究室の先生方を交えながら、研究討論、論文紹介、講演、工場見学、産学協同に関する討論等これまで40回を越える技術ミーテングを行ってきている。
これらの共同研究・技術交流を通じて次のようないくつかの研究成果が生まれ、群馬大と三洋電機で共同で論文・学会発表、特許出願を行ってきた。

a. 高速CMOS AD変換器LSIを開発している。アーキテクチャ・回路の工夫により、低消費電力・少量ハードウェアで最高スピードができる構成になっており、特許出願3件を行った。三洋電機で製品化すべく、現在群馬大・三洋電機の双方で性能の完成度を上げるため設計の改良を行っている。

b.携帯機器用チャージポンプ回路を開発し、現在三洋電機で製品化されつつある。
その成果をもとに同社の技術者の一人は博士号を取得した。
さらに三洋電機(大泉町)、日立製作所(高崎市)、群馬大工学部(桐生市)が連携し、群馬地区を「アナログ回路技術」分野の高度研究・教育地域にする構想が現在進んでいる。

(2)アジレント・テクノロジー(株) 共同研究「先端電子計測技術の研究」2000年から現在までアジレント・テクノロジー社はヒューレット・パッカード社の計測部門が数年前分社化して設立された会社で、世界でトップ・クラスの計測器メーカーである。
当研究室では同社のアナログ・デジタル混載LSI テスターの開発グループ(東京都八王子市)とLSIテスト評価アルゴリズム・回路方式に関し2年前から共同研究をおこなってきている。
また、同社も含めた計測器メーカー6社のコンソーシアム(研究会社)である(株)テラテックとも高速電子計測技術の分野で技術交流を行ってきた。

(3)東京測器研究所(株) 共同研究「高精度計測用集積回路の研究」2001年から東京測器研究所社は「ストレイン・ゲージ、変換器、ひずみ測定器」を主力製品とする計測器メーカーで、群馬大工学部の近くの相生工業団地に主力工場をもつ地元の企業である。
地元産業界との交流・貢献を目的に北関東産官学研究会の研究助成を受け、2001年度から共同研究を行ってきている。