テラテック の小林謙介氏とのデジタル・ストレッジ・オシロスコープの等価サンプリング技術関連の電子メールでの技術討論(の一部)。
氏はこの分野で25年以上の経験のある第一人者。この分野で一を聞くと十教えてくれる。
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等価サンプリングシステムで時間分解能を T としますと帯域 f は どれくらいまでの
Ø
信号を扱いますか。
「時間分解能」と「帯域」の定義を明確にする必要があると思うのですが、まずは等価サンプリングで一般的に使われている概念でお話しします。「時間分解能は隣接するサンプリングポイント間」の等価時間間隔とし、「帯域」とは最低でも ●緩い関係 は持ちます。
●緩い関係(分解能下限): 「帯域」を1GHzとすると、立ち上がり時間は350ps程度となります。この間を数点(例えば3点)以上は取らなければ、との適当な考えから、時間分解能は50〜100ps以下(もし正弦は周期で言えば10〜20点)が要求されます。
●分解能上限: 管面ドット数が先に規定され、一般には256〜1Kです(管面波形のドットが十分に繋がって見える、or 粗く見えない)。 一方最大掃引時の波形立ち上がり部をほぼ半管面程度には表示したいので、例えば1GHzBWのオシロでは最大掃引時の時間窓を500ps〜1ns(1GHz正弦波なら半波長から一波長)にします。結果、500ps/1K=0.5ps
もしくは 1ns/256=4ps の時間分解能で設計します。
●製品的見地:時間分解能が高いに越したことは無いのですが、実際にはジッタが存在するので機械的に高めても意味がありません。帯域を50GHzとすると、上の例では最大掃引時の時間窓が10〜20ps、時間分解能は0.01〜0.04psとなります。一方現実の機器ジッタは2ps
p-p以上あります。このジッタで揺らぐデータを細かくとっても余り意味がないと考える場合が多く、また製品のうたい文句として管面のリフレッシュ速度が要求されるため、通常はジッタの1/10以下の時間分解能(0.1〜0.2ps)に止まる(私見)と考えます。尚、用いる等価サンプリング法でも時間分解能は異なってきますが、理屈ではなく達成しやすいか否かのメーカ的判断です。
一般的な説明としては●分解能上限: あたりになるのでしょうか。因みに私たちが作っていたシステムは、サンプリングレート=300MHz, 帯域≧5GHz、機械的な時間分解能は0.2〜0.4psです。
リアルタイムのDSOはもっと恐ろしい(?)データ取得法です。サンプリングレート(=時間分解能)Fsと帯域BWの関係は概略Fs/BW=4(hp製品、一般)で、●緩い関係 を更に弛めています。サンプリング定理よりこの比が2以上ないと波形再現はできないわけですが、逆に比が4あればデータ収集として冗長性あり。もしデータ数が少なく波形が見づらいのなら、正弦その他の補間を駆使してドット間を繋ぎ、人の目にそれらしく映るようにしています。
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物理系の方と話をすると、彼らの称する時間分解能は(機械的な時間分解能+ジッタ+機器帯域+ノイズ)を全て考慮した表現のようで、本当はこれが正しいのかと思います。私が書いたのは 機械的な時間分解能をどう決めているかです。
テラテックと共同研究開発したAD変換器
GaAs HBT を用いた バンドバス・デルタ・シグマAD変調器
SiGe HBT を用いた 高速6ビットAD変換器
SiGe HBT を用いた 高速7ビットAD変換器