講演会詳細


群馬大学アナログ集積回路研究会


題目: 「回路の歴史 〜 先人たちの苦労、今に残る混乱 〜」
講師: 源代裕治先生(ザインエレクトロニクス)
日時: 2020年10月06日(火)16:00-17:30
場所: インターネット配信。
受講希望者は事務局(kuwana.anna[at]gunma-u.ac.jp)にご連絡ください。
ZoomのURLをお送りします。
概要: 私の担当7回分の講義では、長年考え、また経験してきた私の回路論を説明します。
その中に、現役のアナログ回路技術者として、技術者の卵の方々に、技術者の生活の
雰囲気を伝えられたら良いなと思ってます。

中学生の頃から電気を本格的に学び始めましたが、当時疑問に思ったことは
沢山の経験を積む中でも、なかなか解消しませんでした。私と同じ疑問を抱く方は
少ないようで、文献を漁ってもちっとも理解が進みませんでした。

例えば、電流はどのくらいの速さで流れているか、分かりますか。

ここ数年来、子供の頃から持ち続けた疑問が、少しずつ解消してきました。
その過程で、回路に関する認識が相当に変わって来ました。
今回の講義では、ようやく形になり始めた回路論を、一緒に眺めて行きましょう。

既存回路論が、あらゆる状況で正しい結果を導けるのに、なんで回路論の再構築なぞ
する必要があるかという疑問は当然です。しかし新解釈は、私が回路を理解する上の
必然でした。おまけに、日々の設計業務でも有効に活用できています。

大まかなストーリーとしては下記のように考えています。

手始めに、電気の歴史(回路の歴史)を眺め直します。これは、偉大な先人たちの苦闘を
偲ぶだけのものではありません。我々が今立ち向かっている問題に対する知恵と勇気を
与えてくれるのです。

その後数回かけて、通常とは違うフレームワークで回路理論を再構築します。

後の講義では、真空管・バイポーラトランジスタ・MOSトランジスタなどの
アクティブ素子の回路を見て行きます。様々な回路を詳細に見るというより、
新解釈回路論の観点から、統一的に理解できる様子を鑑賞しましょう。
主役が変わっても変わらない本質が見えて来ることを期待しています。
現在主役のCMOS時代も、いつか終わりが来るかもしれません。

もとより非正規カリキュラムなので、予定には余り捕らわれないで、折々の話題で
気ままに寄り道をしましょう。興味がある回だけ聴講しようという人には申し訳
ありませんが、下記とは全然違う回があるかも知れません。ただ、全体を通じて
回路の話題を展開して行きますので、できるだけ通して聴講していただきたいと
思います。学生さんには、ほぼ出席点だけで成績を付けますが、毎回の簡単な
レポートと全体で一つのレポートをお願いするつもりです。

本講義では回路方程式は殆ど使いません。式を解いて現象を理解することの重要性は
強調しすぎることはありませんが、式を使わない方が良く分かることを話します。
その代わりにシミュレーションなど、先人たちが使えなかった道具も、今なら使える
というものは躊躇なく使いましょう。また時間と供に蓄積された知見も、開拓者には
使えなかった財産です。大いに活用しましょう。


第1回(10月6日) 回路の歴史
〜 先人たちの苦労、今に残る混乱 〜

第2回(10月13日) 回路の理論1 (枠組み)
〜 部品(=枝)の接続(=節)に電流・電圧の属性を付与したものが電気の回路 〜
〜 Kirchhoffの法則はその公理 〜

第3回(10月20日) 回路の理論2 (IV特性)
〜 Ohmの法則は、法則というより抵抗の定義 〜

第4回(10月27日) 回路の理論3 (時間の導入、交流理論、積分変換)
〜 枝特性として時間を導入しよう 〜
〜 周波数は固有関数のパラメータとして登場する 〜
〜 交流理論と積分変換の同一視 〜

第5回(11月10日) アクティブ素子
〜 真空管は人類が初めて手にした能動素子。何もかも初体験 〜
〜 トランジスタの勝手違いに手を焼きながらも、真空管の経験は生きた 〜

第6回(11月17日) 基本回路 (動作点の設定)
〜 能動素子のIV特性 〜

第7回(11月24日) 回路を鑑賞しよう
〜 差動対+カレントミラー≒IC 〜
〜 真空管時代は50年、ではCMOS時代は 〜


この講演は、群馬大学での講義を兼ねています。
講義のページ https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/lecture/lecture.html