国際交流
20年前のナポリ大学との交流、欧州訪問記、メダル 2015年10月:群馬大学理工学府 留学フェア 海外出張報告まとめ(2000年~2018年) 海外出張報告まとめ(2018年後半、2019年前半) Gunma University Kobayashi group go everywhere ! 1.海外からの研究者招聘
2.海外出張記録 -世界に向けて情報発信、世界の情報収集-
海外研究開発動向調査派遣(欧州大学訪問) 電気電子工学科 小林春夫 1. はじめに 「エレクトロニクス分野の研究
開発では米国に目が行きがちであるが、欧州からもよい研究が生まれている」「西洋文明発祥の地の欧州からはときどき全く新しい技術が生まれるので目が離せ
ない」ということをよく耳にする。筆者は米国の西海岸に3年間いたことがあるが、今度は欧州のエレクトロニクスを学びたいと思っていたところ、ナポリ大のArpaia助教授から論文を投稿してくれ
との手紙をもらった。そこでそのつてを頼りに今回の3月4日―26日の約3週間での欧州の電子計測技術・アナログ集積回路設計の分野の大学訪問を実現させ
た。 2. ナポリ大学(University of
Napoli, Federico II, 南イタリア) ナポリは南イタリアの中心都
市として栄えてきたが、ここのナポリ大はゲルマン系の神聖ローマ帝国フェデリコ2世が15世紀に設立したヨーロッパ最古の大学の一つで、イタリアではロー
マ大、ミラノ大に続いて3番めの規模の大学である。ここの電子計測工学分野のArpaia助教授を訪ねた。 このグループはCennamo教授が研究上のリーダで、「科
学上の豊富なアイデアをもち、グループのメンバーの面倒見がよく、予算や政治的な駆け引きには疎い、真の科学者」(Arpaia助教授)である。Cennamo教授は計測システムをWebに接続し、インターネットで制
御・観測できるシステム(Remote
Measurement System based on Network)の研究を南イタリアの他大学(カラボリア大学、サ
ンニョ大学等)と協力して立ち上げ、この研究はまもなく国家プロジェクトになるとのことである(これは「欧州からの新しい技術」ではないか)。超高速に信
号波形を取り込むためのTektronics 社のスキャン・コンバータの特
性補償の研究でも成果を上げてきた。Arpaia助教授はAD変換器の測定・評価・モデリン
グ技術、計測分野での品質管理・パラメータ最適化法(Taguchi Methodの応用)、各種センサの特性補
償等の研究を行っている。Taguchi Methodの創始者田口玄一氏は群馬大工
学部の前身の桐生高専の出身と伝えると大喜びしていた。米国や欧州各国の研究者と共同研究を行っており、学生をあちこちに送り込みまた自分のところにも受
け入れている。例えばΔΣAD変換器の特性補償アルゴリズム
を米国のRhode Island大学と共同で開発している。 長老のLangella教授は「工学の研究は理論だけ
でなく実験で検証されなければならず、最終的には産業界で使われてその有効性が示されねばならない」という考えを持っている。D’Apuzzo教授はクロックのジッタ・位相
ノイズの計測技術、テレコム用計測システムの研 究を行っている。 ナポリ大の電気工学科では修士課程卒業まで最短で5
年であるが実際は平均8年かかり、また入学者が卒業できる割合が4―5人に1人であるので、少し制度を変更しようとしているとのことである。大学教授は相
当激しく仕事をしている。 Arpaia助教授の家に何度も招待してい
ただき、また休日はご家族とナポリ市内やポンペイ遺跡の観光に連れて行っていただいた。イタリアではローマ・カソリックに基づいて家族を大事にし、母親の
存在感が強い母系社会であることが感じられた。ナポリの中心のビルは日本人により設計され、ベスビオス火山近辺の住民の避難方法は日本の都市工学者と共同
研究されている等、建築・土木関係ではナポリと日本とは交流がある。南イタリアでは朝は9時くらいから仕事が始まるので朝食は7―8時くらいであるが、昼
食は14時、夕食は20時半くらいからで、食事の時間は日本と大きく異なる。また、南・北を問わずイタリアでは英語は大学では大体通じるが、町中では5人
に1人程度である。なお群馬大SVBLでArpaia助教授を2000年7月から
1ヶ月間招聘予定である。 3. イタリア
空軍学校(Italian Air
Force of Academy, 南イタリア) ナポリ湾の岬の突端のプツオ
リにイタリア空軍学校があり、ナポリ大のCennamo教授はここの教授(電子計測分
野担当)も兼任しており、ご厚意により連れていっていただいた。Cennamo教授のお父さんが物理学者とし
てこの学校に多大な貢献があったとのことで、その名前が掲げられている研究室が残っている。この学校は定員130人のところ入学志願者は男子6千人、女子
7千人と大変な競争率であり、入学後もパイロットのコースで卒業できるのは約半数とのことである。また一部ナポリ大との単位互換も行っている。航空機のエ
ンジンや電子計測器等の教育設備が充実していた。ここでは教育だけでなく研究も行っているらしいが、(当然のことであろうが)説明・見学は教育機関として
の内容で研究機関としてのものは一切なかったが、将校の方々が時間をとって説明してくれ最大限の歓迎をしてくれた。 4. カラボリア大学(University of
Calabria, 南イタリア) ナポリから南に電車で約2時
間、イタリア半島の最南端近くのコゼンツアは古代ローマ遺跡が残り、ピタゴラスやタレス等の哲学者が輩出したことで知られる。Arpaia助教授からの紹介で、ここのカ
ラボリア大学のGrimaldi教授を訪ねた。カラボリア大学
は比較的新しい大学で、米国のキャンパスをモデルにした近代的な建物からなり学生数は約2万人でイタリアでは中規模の大学である。Grimaldi教授はCennamo教授の卒業生で、ナポリ大グ
ループと共同でインターネットを用いた分散計測システム、トランスデューサの特性補償、信号処理アルゴリズムの研究をしている。南イタリアにはエレクトロ
ニクス産業はほとんどなく、大学にも半導体デバイスのような分野はないがソフトウェア産業は盛んということである。 イタリアにはいわゆる南北問
題があり失業率は北は5%に対し南は25%程度と聞かされるとその数字だけでは驚くが、訪れた南イタリアの町はいずれもきれいで近代的な建物が立ち並び郊
外の高速道路も立派であり、また医療費・教育費はほとんど無償とのことで、この数字が社会の実態をあらわしているわけでもないと思う。 5. サンニョ大学、サレルノ大学(University of
Sannio, University of Salerno, 南イタリア) ナポリからバスで内陸に向かって約1時間行くと、古
代ローマ遺跡が点在する一方近代的で閑静な町ベネベントに着く。そこのサンニョ大学はサレルノ大学の一部が分離・独立したもので、そこのコンピュータ・サ
イエンス学科のDaponte教授を訪ねた。教授には99年
6月に日本での学会(IMEKO)の際に群馬大SVBLに招待し講演をしていただいて
いる。またナポリ大のCennamo教授の卒業生でこのグループと
密接に交流して研究を行っている。 Daponte教授は電子計測出身、現在がコ
ンピュータ・サイエンス学科にいるので周囲にソフトウェアの専門家が多い、欧州でテレコム技術・産業が急速に伸びているということを背景に、テレコム用信
号処理アルゴリズム、AD/DA変換器モデリング技術、電力品
質解析システム、インターネットを用いた分散計測システムの研究を行っている。「AD/DA変換器技術では、これからテレ
コム用の (i) AD変換器とトランスミッションを
組み合わせたシステム、(ii) DA変換器、(iii)画像デジタイザ、のモデリング
とキャラクタリゼーションが重要だ。AD/DA変換器をどう作るかの研究は多
いが、これらのモデリングの研究はほとんどなされていない」、「テレコミュニケーション技術、インフォメーション・テクノロジーは我々の未来である。現在
欧州はこの分野の研究をするのに最も適している」と力説している。 Daponte教授と品質管理・電子計測分野
でつながりがあるFINMEKグループのPBA社のエレクトロニクス工場を見
学させてもらった。「南イタリアにエレクトロニクス工場はまだ少ないが我々のマイクロ・エレクトロニクスの実力を見て欲しい」とのことで、高品質・高技術
の印象を受けた。「この工場の品質管理にシックス・シグマ(6σ)法の導入を検討している。」最新の設備が導入されて自動化されている一方、一部人手によ
る部分も残されており、これは「完全に自動化すると従業員の職を奪ってしまうため」とのことだ。またサレルノ大学も(学生に)案内してもらった。「これか
ら群馬大、日本と交流を深めていきたいので、我々の全てを見て欲しい」とのことである。Daponte 教授は国際交流に力を入れ始め
ており、現在2人の外国人研究者を受け入れている。その一人のスロバキアからのSaliga助教授は「非常に良くしても
らっている」と言っている。また学生を卒業研究のため各地の企業(Nokia,
Ericsson, Alcatel社等)に送り込んで共同研究をしているとのことだ。 教授は海岸線の美しいアマルフィ・コーストのミノリ
市に住んでいるので、そこのホテルに1泊した。この地にはクリントン大統領夫妻やハリウッド・スター等が保養にくることもあるそうだ。その昔アフリカのサ
ラセン帝国の海賊船の攻撃に対抗するために作った灯台や城壁などが残されている。南イタリアは統一王朝がなかったためフランス、ゲルマン、スペイン等何度
も支配者が代わったとのことである。 6. パビア大
学(University of
Pavia, 北イタリア) パビアはミラノの少し南に位置し、欧州で(独、英
と比べても)最も経済的に繁栄している地で、ここのパビア大学は18―19世紀に電池の発明者のボルタ(Volta) が教鞭をとったところであり、
構内にボルタの像が残っている。アナログ集積回路の研究グループはイタリアでは少ないが、パビア大学はこの分野で世界的にレベルが高く、Maloberti教授の率いる集積マイクロ・シ
ステム研究グループ、Castello教授のマイクロ・エレクトロニ
クス研究グループ、Manfredi教授の電子計測研究グループと
がある。今回はMaloberti教授グループのMalcovati 助教授にコンタクトした。Maloberti教授グループではセンサ・イン
ターフェース回路、低電圧ΔΣAD変換器(変調器、デジタル・
フィルタ、モデリング)、フラッシュ・メモリ、光センサチップ、AD変換器線形性補正アルゴリズ
ム、アナログ回路へのデジタル回路からの基板ノイズ、低電圧バンドギャップ参照電圧発生回路等の研究開発をしている。またここで開発した補聴器用ICはそのまま製品になったとのこ
とである。Castello教授はアナログ・フィルタ回路
で著名であるが現在はマイクロ波研究グループと協力しながらCMOS RF 回路の研究に力を入れている。
現在ほとんどの回路ブロックの設計・評価ができ、今後はそれを組み合わせたシステムを構築していくとのことだ。日本企業からもアクセスがある。電子計測グ
ループは低ノイズ回路設計等の研究をしている。これらのグループからスピン・アウトして集積回路設計センター(ベンチャー企業)もできている。なお若いMalcovati 助教授は間違いなくこれらの分
野の次の世代の世界的リーダーになっていくと思う。 パビア大のこれらのグループ
はSGS-Thomson
Microelectronics社(以下STM社)と密接な関係を持ってい
る。パビア大と同社の共同研究プログラム(Studio Di
Microelettronica)でパビア大のこの分野をバックアップし、学生の就
職も同社に多く、同社から研究者も何人か来ており、フラッシュ・メモリの研究をしているTorelli助教授も同社出身である。ミラ
ノ近辺にはLSI Logic 社、Maxim 社等エレクトロニクス企業が多
いとのことだ。 北イタリアのエレクトロニクス分野ではミラノ工科
大、トリノ工科大がレベルが高いが(ミラノ工科大の核物理実験用の低ノイズ高精度回路技術以外は)アナログ集積回路設計の研究グループはほとんどないとの
ことである。一方南イタリアのシシリア島のカターニアにSTM社の設計センターがあり、同地
区の大学でSTM社と連携しアナログ集積回路研
究室ができているとのことである。 休日にミラノのレオナルド・ダ・ビンチ科学博物館に
遊んだが、この国のダ・ビンチ、ガリレオ、マルコニ、ボルタ等の人たちが新しい科学技術に挑戦し近代科学技術の基礎を築くのに大きく貢献したということを
再認識させられた。 7. アインドホーベン工科大学(Eindhoven
University of Technology,オランダ) アインドホーベンは Philip社の発祥の地で研究所や多くの
工場等があり地元の人は「Philip社の都(Capital of
Philips)」と呼んでいる。滞在したホテルには日本人ビジネス
マンも多かった。この地のアインドホーベン工科大学はオランダの3つの工科大学の一つ(他はDelft とTwente)で近代的な大学であり、ここ
のMixed-Signal
MicroelectronicsグループのRoermund 教授を訪ねた。同グループでは
物理デバイスのグループ等と交流し、フラッシュAD変換器の新しい構成、バンドパ
スΔΣAD変換器、基板ノイズ減少のため
の自動レイアウトを行うアナログLSI CAD、RF回路、ナノ技術、ニューラル・
ネットLSI等の研究を行っている。このグ
ループのVandamme助教授は低周波ノイズ(1/fノイズ)の研究を長年精力的に行ってき
ており、最近はLSIのワイア・ボンデングの接触の
信頼性診断に1/fノイズを用いることを提案して
いる。また「デバイスからの1/fノイズの物理的発生メカニズム
はまだ完全には解明されておらず、75年間未解決の問題である」と力説されていた。 AD変換器で著名なPlassche 教授は昨年Broadcom 社に移籍された。 筆者は1996年にオランダのデルフト工科大
学(Huijsing教授)を訪れたことがあるが、ここで
はDIMES(Delft
Institute of Microelectronics and Submicron Technology)という研究施設でCMOS, Bipolar
プロセスを持っており、チップ上にセンサも集積した
スマート・センサ等の試作を行っていたのが印象的であった。またオペアンプ回路等では毎年のようにレベルの高い国際会議(ISSCC等)で発表している。 これらのオランダの工科大は
(集積回路の分野だけに限らず)Philip社と技術的に密接に交流してお
り、共同研究でLSIをPhilip社がファブリケートすることも
しばしばあるとのことである。Roermund教授はPhilip社研究所の出身であり、同社か
ら博士課程に戻ってきた学生もおり、学生の就職も含めて人的交流も盛んであるようだ。これらの人達や大学はこの国の宝だという印象を受けた。 8. ルーア大
学 (Ruhr
University, Bochum, ドイツ) ドイツで日本人が多いことで知られるデュッセルドル
フから電車で約1時間、森に囲まれた閑静なボッヘムにドイツで6番目の規模のルーア大学がある。ここの Langmann教授、Rein教授、Schreiber教授のグループはSiGe HBTの技術を中心に、超高速バイ
ポーラ・アナログ回路技術で世界的に著名なグループで、「彼らの研究は技術ではなく芸術である」と評する人もいる。このLangmann教授を訪ねた。 SiGe HBTはここ2-3年の間に半導体産業で急速に実
用化が進みつつあるが、このグループはその将来性を見込んで1990年から取り組んできた。デバイ
ス・プロセス担当のSchreiber教授は「最初はトランジスタ単
体も動作しなかったが、Si BJT にはないSiGe HBT特有の問題を次々に解決し、現
在まで大学の設備でft=70GHz,
fmax=70GHz の高速SiGe HBT ICを実現している。ICのマスクも大学で作成でる。」
回路担当のLangmann教授、Rein教授ではこのSiGe HBTでいくつかの通信用超高速ICを実現している。またこの大学
でのSiGeHBTプロセスに限らず、産業界のSiGeHBT, Si
BJTプ
ロセスを用いて、クロック・リカバリ回路、ミキサ、VCO、高速光ファイバ伝送回路2-5.8GHz移動通信用回路、1GS/s 10b T/H回路等の高速回路を研究開発し
てきている。研究室の高速回路の評価技術もレベルが高いとの印象を受けた。さらにRein教授は超高速バイポーラでは従
来のSPICEモデルでは不十分なので独自に
モデルを開発している。Langmann教授は技術がバイポーラからCMOSに移ってきているので、CMOS回路の研究としてVertical MOSのモデリングの研究を始めてお
り、次に高速MOS用のモデリングにつなげていき
たいとのことだ。 これらのグループはIBM社、HP社その他の企業との連携も密で
ある。一方、オランダでも聞いたことだが、現在就職は極めて良いのにエレクトロニクス専攻を希望する学生が少ないのが悩みの種とのことだ。現在ドイツでは
この分野の技術者が足りないので外国人技術者を永住権を発行して受け入れている。 9. スイス連
邦工科大学(ETH Zurich,スイス) スイスの商工業の中心都市チューリヒは、2つの山
に囲まれた谷に市街地が広がりその先が湖になっている美しい街である。その一方の山の中腹にスイス連邦工科大学があり、ここのIntegrated
Systems Lab のHuang助教授を訪ねた。同助教授は博
士課程の学生を15人もちアナログ集積回路設計グループを率いている。この他にテクノロジーCAD、プロセス・デバイス、集積回
路システム設計・テストの研究グループがある。Huang助教授は現在無線通信用集積回
路設計の研究に最も力をいれている。具体的には0.25μm CMOS GSM
Transceiver, GSM用ΔΣAD変換器、第3世代UMTS用回路、ページャー、オンチッ
プ・インダクタンスを用いた1GHz LC発振回路、1.57GHz GPS 回路(時計用)、水晶発振回路
(時計用)、線形位相アナログフィルタ、スマート・パワー、センサ・インターフェース、SAR AD変換器、OTA回路の最適化設計等の研究を
行ってきており、その幅広さおよびレベルの高さには驚かされる。日本の大学でCMOS RF 回路の研究をやっているところ
が全くないのは問題であろうと指摘されていた。 共同研究先は近くにPhilip社と時計メーカーがあるが、フ
ランス、ドイツ等かなり離れたところまででかけなければならない、CMOS RF 回路(CMOS GSM
Transceiver)の研究で日本メーカー(東芝)と5年間の共同研究
を行い、研究成果は多くの学会で発表してきた、Lucent
Technology社・Rockwell社とも連携しているとのこと
だ。Huang助教授と話して感じたことは、
研究テーマの選定に当たっては、自分の興味だけで決めるのではなく、今後のエレクトロニクス産業で重要になる分野を予想しそこに何が貢献できるかを強く意
識しておられているようで、同助教授が世の中の動きに非常に鋭敏であるということである。 本格的な研究は博士課程の学生が担当しているが、修
士課程でも教育目的でその研究の一部の集積回路を回路・レイアウト設計及び試作されたチップの評価をしている。欧州の大学での研究教育用に集積回路をファ
ブリケートするファンダリは大学のプロセス、共同研究の企業、EuroPractice,
AMS社
等である。この大学のテクノロジーCADのグループからベンチャー企業
(ISE)が設立されたが「まだ億万長
者は生まれていない」とのことである。 10. おわり
に 欧州の大学でも産学協同が推奨されてきており、シリ
コン・バレーのようではないが、少しずつ大学からベンチャー企業が生まれている。現在欧州の経済は好調で修士卒で就職状況がよい、博士号取得者は産業界で
米国社会でほど評価されないということで博士課程の学生の確保に苦労している大学も多い。また、Daponte教授の次の言葉が欧州の現状を
表わしていよう。「2002年1月で通貨はイタリア・リラが廃止されユーロだけになる。そこ(サンニョ大学)にヨーロッパ・ユニオンとイタリアの2つの旗
が掲げられているが、近い将来ヨーロッパ・ユニオンの1つの旗だけになり、ヨーロッパ・ユニオンが経済的・政治的に統合されヨーロッパがよりよい方向に進
んでいくことを期待している。」 今回の欧州訪問後に日本を振り返ると、欧州に比べ
日本には多くのエレクトロニクス・メーカーがあり日本の大学のエレクトロニクス専攻分野はもっとよりよい環境になり得るのはないか、欧州一国から見ると日
本は経済的だけではなく面積的にも人口的にも大国であるという思いを強くした。 今回の視察で大学を訪問して
説明を受けただけでなく、筆者も5大学でセミナーを行い,こちらの研究も紹介し研究交流
を深めた。南イタリアの大学等では日本を訪問したい人が多いので今後さらに交流が深まると思う。なお筆者は1996年にベルギーのKatholieke
Universiteit Leuven (Steyaert助教授)を訪問したが、ここと同地区に
ある産学協同の研究機関IMEC もアナログ集積回路設計等のエ
レクトロニクス分野で世界で最高レベルであることを付記しておく。どの大学でも大変親切にしていただいた。また今回の海外派遣では事務の方々も含めまして
群馬大SVBL関係者に大変お世話になり、こ
の場を借りてお礼を申し上げます。 |